「ROCK ENDの"座り"にこだわっています」 - 島本健一郎さん(前編)

「ROCK ENDの"座り"にこだわっています」 - 島本健一郎さん(前編)

先代からROCK ENDを引き継いで作らせてもらっています

ROCK ENDづくりについて
ROCK ENDはどういった経緯で生まれたプロダクトですか?
島本さん

ROCK ENDについては父である先代がデザイナーさんと共に作りあげたものなので、僕はその当時の経緯を詳しくは知らないんです。当時、父がお墓の仕事が終わった後に残って作業をしていたのを覚えています。

父の作品で『CLIMB』っていうのがあったんです。ROCK ENDのようなポコポコっとした山の形の石に、糸を垂らし、その先に人形をひっつけて・・・その人形たちが山を登っている・・・みたいな作品です。それがROCK ENDよりも先なのか後なのかはちょっとわからないんですけど、そういう山のように見える自然の石を使って何かを作ろうというアイデアは父の中にあったみたいです。それを引き継いで作らせてもらってる・・・っていう形ですね。

ROCK ENDはどのようにして作られているのでしょう?
島本さん

素材となる石は、サイズと形、キズの有無などの条件をクリアしないといけないので、まず、石を選ぶのに時間が掛かります。そして、サイズが大きくなるほど難しくなります。

採石場に山のように積まれた石から探していくんですけど、石を探すのは、一つ一つを手に取って・・・という方法では無く、全体を見渡すようにして、良さそうな石を探しています。映画のターミネーターの一番初め、未来から真っ裸で来たターミネーターが服を探して選ぶときに、上着やジャケット、ベルト、靴とかを、自分に合うサイズかどうかスキャンするっていうシーンがあるんですけど、ああいうイメージで積まれた石の山を見ていきます(笑)。それで見つけて手で持てば、製品になるかならないかは、大体わかるようになりました。

でも、持って帰ってやっぱりダメっていうケースもあります。採石場では見えなかったキズが出たり・・・。「あれ?こんなとこにキズがあったんや」とかって。だから余計に、採石場でちゃんとちゃんと見るのが大切で、採石場に行くと本当にあっという間に一時間くらい経ってしまいます。

なるほど。加工はシンプルそうに見えますが・・・
島本さん

加工はまずROCK ENDの「座り(底の部分)」を切削するんですけど、一つ一つの石の形や曲がり方を見ながら「こっちを使うのか、いやこっちの方がキレイやな。じゃあここが山の天辺になるように・・・」という感じで仕上がりをイメージしながら考えていきます。

「座り」を挽いた後、右と左に切り分けるんですけど、これも例えば幅5寸の石だからといって、正確に2.5寸で挽いてしまうとカッコ悪くなるものもある。
全部、一つ一つ・・・丁寧に、ですね。機械をセットしてぽんと置いて切って、またぽんと置いて切って・・・次から次からに、というのでは全然ないんです。

作り手として「ROCK ENDのココを見て欲しい」というポイントはありますか?
島本さん

最近特にこだわるようになったのは「座り」です、「座り」を挽くのは一番最初なので、石に平らな面が無くて、ぐらぐらと不安定な状態で刃を入れて行くわけです。もちろん固定はするんですけど、僅かに動いたりしてしまいます。
そうなると、置いたときにコトコトと「座りが悪い」状態になる。最終的に底面にクッション材が付くので、ある程度は吸収してくれるんですけど、クッション材がなくても絶対にコトコトと動かないように・・・それと、左右の石を合せたときに隙間が出来ないように、切削面が真っ平らになるまで調整しています。

ROCK ENDの片方ずつ、平らでないところを探して、そこにグラインダーを当てて、石粉を除けてチェックして・・・これを繰り返して、片方がOKとなり、次は同じようにもう片方を調整して・・・、出来た二つ合せてみて隙間があればまた調整して・・・で、合せて「うん。大丈夫」と。
手間は掛かりますが、キレイに仕上がるように・・・です。
完成品を手に取った方は気付かないポイントかもしれませんが、徹底してやっています。

(写真左上)ペーパー仕上げに使うグラインダー
(写真下)ROCK ENDの加工にはグラインダーだけで4種類を使い分けている

後半では、庵治石の話や仕事中の必須アイテムなど多岐にわたる質問に答えて頂いています!

島本 健一郎(しまもと けんいちろう)さん

1975年5月18日生(47才:取材日時点)

有限会社 島本石材工業の4代目
1919年に家業であった料理屋から石材業に。創業100年超の歴史を持つ石屋さんで、お墓製造だけでなく、施工や石あかりなどのクラフト制作も手がける。
担当しているAJI PROJECT商品
ROCK END / MON / MIRROR by BP.(台座部分)
プライベート
演劇業界に身を置いていたが結婚を機に家業を継ぐ